概要
地域課題解決コンサルティング会社である株式会社地域創生Coデザイン研究所 (以下CoDIPS、NTT西日本100%子会社) は、日本のさまざまな地域課題に対し、自治体、事業者、大学などの教育機関、観光地域づくり法人 (DMO)、観光協会と連携し、地域への "伴走・共創" による課題解決に取り組んでいます。特に、これまでの豊富な支援実績と知見、自治体など地域のステークホルダーに適したデータ活用ノウハウ (*1) をもとに、多くの地域に共通する「観光」を注力分野の一つとして、持続可能かつ「稼げる観光地」への変革を推進しています。
(*1) 市中のオープンデータに加え、地域のステークホルダーが必要とする地域独自データやコンテンツを収集・加工・蓄積、ダッシュボードによる可視化を通じて分析する一連のノウハウ
データ活用×コミュニティで、地域経営の未来を描く
地域における人口減少・少子高齢化が進展する中、地域が直面するさまざまな課題に対し、国や地方自治体は限られた資源を活用した対応を迫られています。デジタル化を推進し、保有しているデータを活用した住民サービスの向上や政策立案に役立てようとする一方、データ基盤など環境面の議論が先行し、その環境を活用できる人材のリテラシー向上が急務となっています。
具体的な例として、DMOによる地域観光マーケティングが挙げられます。国は2030年までに訪日外国人旅行者数6,000万人・消費額15兆円をめざし、海外からのインバウンド誘致を加速している一方で、地域での観光を担うDMOでは地域観光戦略の立案、事業やマーケティング戦略など、地域の観光に関わるステークホルダー (例:宿泊事業者、土産物販売店、アクティビティ事業者など) を巻き込んだ議論を活性化できていないのが現状です。
このような状況に対し、CoDIPSは "データドリブン・コミュニティ" というコンセプトを掲げて伴走型で取り組んでいます。ステークホルダー個人個人の信念や情熱をつなげ、コミュニティの仕組みづくりをサポートするというものです。文化を生み出す地域コミュニティを作る3つの柱として、以下を掲げています。
- 地域キーパーソン (個人・組織) のデータリテラシー向上
- 地域ビジョン達成に向けたデータ活用のファシリテート
- 地域エコシステムを実現する地域コミュニティ形成
CoDIPSではNTT西日本グループと連携してタビマエ・タビナカ・タビアトのユーザージャーニーの中で重量な役割を担う地域コミュニティ形成、地域をつなぐデータ戦略の構築、持続可能な観光地経営に不可欠な "人づくり""仕組みづくり" を上記コンセプトに基づき横断的に支援し、地域がもたらす提供価値を高め続ける取り組みを進めています。
事例 : 広島県廿日市市
データに基づく持続可能な観光地経営に向けた伴走支援
CoDIPSと共に観光戦略を再設計し、地域を訪れる人々の顧客体験価値の向上を推進している自治体の一つが広島県廿日市市です。日本三景の一つに挙げられる景勝地として広く知られる宮島を擁する同市では、①訪問者のリピート率改善 ②島内での消費単価向上 ③島内人口の減少への対応、という課題を解決するために、データを活用した変革を進めています。
地域の観光戦略を担うコミュニティ組成をめざすとともに、複数の観光協会・団体が交流し、新たな観光周遊プランを推進している同市の取り組みは、2023年3月に観光庁と国連世界観光機関 (UNWTO) により刊行された「持続可能な観光の実現に向けた先進事例集」においても先進的な活動として取り上げられています。
CoDIPSによる長期にわたる伴走支援として、具体的には以下のような活動が挙げられます。
1. なりたい姿の合意
- 宮島の観光における課題を、観光客数と宿泊者数のデータから分析。インバウンドに強い一方で、リピート訪問および島内消費が少ないという課題を明確化
- 関係者間で ①訪問者のリピート率改善 ②島内での消費単価向上 ③島内人口の減少への対応を地域コンセプトとして設定。データ、エビデンスに基づいた議論により、「旅行客の"量"より"質"を追求する」「"日帰り"より"宿泊"を増やす」といった"なりたい姿"について合意形成
2. なりたい姿と現状のギャップを埋めるためのイベント実施〜効果検証のPDCA
- 来て欲しい旅行客層を対象に、"関係人口増加"をテーマとした対面でのトークイベントを開催
- 事前のSNS発信と反応データ・申込者数の確認から、当日の参加者情報、アンケートデータの分析などを通じ、次の施策に対する改善点を抽出
【写真:ターゲット層の生の声を聞くトークイベント】
3. 観光庁事業を活用したレベニューマネジメントとDX勉強会の実施
- プロジェクトの推進力を高めるため、地域におけるデータ活用文化の醸成と地域でデータを活用した課題解決を支援
- 上記を担うデータ活用人材の育成、事業者を巻き込んだデータ活用文化の醸成を目的に、DX勉強会を実施
- 地域の複数の宿泊事業者間で宿泊データを共有、それらを収集・蓄積・可視化し、レベニューマネジメントの検証を実施
- 宿泊データを共有し、宿泊事業者が相互に経営改善に向けた新たな取り組みのアイデアを出し合うなど、地域一体となった取り組みに向けた意識を醸成
【写真:プロジェクトの推進力を高めるDX勉強会】
4. 観光DMP構築とナイトアクティビティ創出
- なりたい姿の実現や、各種課題解決に向けたPDCAを高速に回すために、地域の各種データを一元管理する基盤が必要であるため、廿日市市が主導する観光DMPの構築を支援
- 宿泊事業者や宿泊施設管理システム (PMS)、サイトコントローラー(*2)が持つ宿泊データ、観光協会や自治体へのWebサイトへのアクセス情報、観光庁や観光局 (JNTO) などが公開しているオープンデータをはじめとした各種統計データを収集、加工、蓄積、可視化することで、売上拡大に向けた各種施策、ターゲット分析、施策の効果検証などに活用可能な仕組みを構築
- 観光DMP活用の一例として、島内消費の拡大・宿泊客の増加に向けたナイトアクティビティを創出。観光DMPからターゲットとする旅行客の属性と興味関心を引き出し、日本の歴史・伝統文化を肌で感じられる体験プログラム「松明づくりワークショップ」を企画・開催
- 事後アンケートによる効果検証や、Webプロモーションの効果検証も行い、次の施策に向けた知見を蓄積
(*2) ホテル・旅館など宿泊事業者が、稼働率向上のために複数の宿泊予約サイトを活用しつつ、ダブルブッキングのようなトラブルを防ぐために複数の宿泊予約サイトを一元管理するシステム。
【図:なりたい姿の実現を後押しする観光DMP構築】
「地域と共に成長し、データとコミュニティの力で新たな価値を創造します。」
株式会社地域創生Coデザイン研究所
冨田 祐策 様
戦略とデータ、人をつなぎ、変革を主導するコミュニティを醸成
Slalomは、北米市場で培ってきたデータ活用の方法論のノウハウとアプローチ、および地域におけるデータドリブン・コミュニティの創造・拡大やコミュニティ関連系による活性化を通じて、地域課題解決に向けた変革を支援してきました。
顧客提供価値を高めるためには、まずはデータを活用して何を実現したいのか・どのような課題を解決したいのか、具体性のあるビジョン策定が重要となります。先行する自治体・DMOでは、地域特性に応じてどのような旅行客を呼び込みたいのか、観光計画から観光地域マーケティング戦略 (セグメンテーション、ターゲティング、ポジショニングなど) の策定などを支援。また、地域観光マーケティングではDMOが主導者となりステークホルダーを巻き込む必要があるため、データを用いた地域の課題解決策の議論と合わせてステークホルダーのデータリテラシー向上を支援し、データドリブン・コミュニティ醸成を実現しました。
また、各地域が持続的に課題解決を進めるためには、展開・整備しやすいプラットフォームを活用することも求められます。これまでSlalomがビジネス変革の推進を通じて培った世界のトップテクノロジー企業とのパートナーシップをもとに、データ基盤としてSnowflake、各自治体が使用するツールとしてTableauが選択され、ともにCoDIPSによる地域観光コンサルティングのサポートを行っています。
今後の展望
国によるインバウンド施策が進み観光客が急増する一方、受け入れる地域における準備が不十分な状態では、地域の自然、生態系、環境への悪影響をもたらす「オーバーツーリズム」など新たな課題も懸念されます。
CoDIPSでは、観光を軸に地域課題を解決するコンサルタントとして、廿日市市での営みを他地域においても展開していくことで、地域コミュニティの形成、地域をつなぐデータ戦略の構築、持続可能な観光地経営に不可欠な "人づくり""仕組みづくり" を横断的に支援し、さらなる地域課題の解決へ貢献することをめざしていきます。
※当ページに掲載している情報は、記事執筆時点 (2024年4月22日) のものです。
地域創生Coデザイン研究所について
地域創生Coデザイン研究所(CoDIPS)は、NTT西日本グループの地域創生コンサルティング会社です。①課題探索 ②シナリオ構想 ③実行計画策定 ④シナリオ検証 ⑤社会実装まで一気通貫した地域創生コンサルティングにより、「観光」をはじめ、「森林・林業DX」「まちづくり / スマートシティ」など、さまざまな分野で地域課題の解決に取り組まれる“地域の主体(自治体や企業、組織、その連携体)”さまの活動をご支援しています。詳細は、(https://codips.jp/) をご覧ください。
Slalomについて
Slalomは、「ビジネス×テクノロジー」で企業のコア・ビジネスのトランスフォーメーションを支援するコンサルティングファームです。AIをはじめとする革新的なテクノロジーの活用によって顧客への提供価値やビジネスモデルを再定義し、変革をゴールまで共に推進しています。組織に成果をもたらし続けるSlalomのコンサルタント、エンジニア、アーキテクト、エクスペリエンスデザイナー、データスペシャリストのチームは、グローバルで培った豊富な「DX→BX」経験および世界のトップテクノロジー企業とのパートナーシップをもとに、変革をやりきるためのチャレンジを強力にサポートしています。世界45拠点をベースに組織の変革を一貫して支援し、Fortune誌の「働きがいのある会社ベスト100」に8年連続で選出されています。詳細は (https://go.slalom.com/SlalomJapan) をご覧ください。
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