SLALOM ON AIR - ポッドキャスト・インタビュー
竹中工務店: 400年の歴史を礎に、未来を見据え企業文化を変革

竹中工務店は、東京タワー、水天宮、成田国際空港などの世界的に有名な建築物の建設を通じて、社会と将来の世代に貢献するという企業使命を果たしています。同社は、歴史的な文化的価値と最先端のテクノロジー、そしてデザインプロセスのユニークな組み合わせを通じて、未来に向けた競争力を高め続けています。


本インタビューでは、これまでの同社の取り組みの中から、以下にフォーカスして話を進めています。

  • 400年の歴史を持つ企業が、使命を果たし続けるために企業文化を変革する一方、どのように伝統的な価値観を維持しているのか
  • 持続可能なアプローチ、顧客中心主義、目的主導型の価値提案
  • 建設業界における設計・施工の未来にアジャイル活用がもたらす可能性
  • 竹中工務店のアジャイル・アプローチにおいて、長年培った働き方を再考した理由
  • データをデジタル化し、3Dモデリングを強化することによる生産性や効率性の向上
    *インタビューは全て英語で行われています。以下に参考訳を掲載しておりますので併せてご覧ください。
     

インタビューを聞く

ポッドキャスト・インタビュー (参考訳)

Dave Uhler (以下、Dave)

皆さん、「On The Edge」へようこそ。今、「サステナビリティ」は、私にとって最も身近なトピックの1つです。今日は、何世紀にも渡るサステナビリティの話題に触れたいと思います。この話題を取り上げるのに、「竹中工務店」ほどふさわしいグループはないでしょう。多くの方がご存じのとおり、「TAKENAKA」は世界有数の建築業界の中心的な企業です。港湾、高層ビル、素晴らしい歴史的建造物など、これ以上クールなものはないと言えるでしょう。

今日はお二人にご登場いただきます。まずは「山ちゃん」こと竹中工務店の山崎裕昭さん (以下、山崎氏)、今日は On The Edgeへようこそ!

 

山崎氏

皆さんこんにちは。今日はお招きいただきありがとうございます。とても光栄です。

 

Dave

そしてSlalomから知花里香さんです。里香さん、 On The Edgeへようこそ!

 

知花里香(以下、知花)

こんにちはDave、日本のケースを紹介する機会をありがとう。

 

Dave

お二人ともありがとう。山崎さん、最初に「TAKENAKA」について、ミッション、ゴール、どのように顧客を支援しているかなど、詳しく教えてください。

 

山崎氏

私たちの会社の起源は1610年にさかのぼります。建築請負業者として創業して410年、非常に長い歴史があります。「最良の作品を世に遺し、社会に貢献する」を企業理念として、建物を設計し、建設し、建築するだけでなく、その全体のプロセスを通じて社会全体に貢献することを使命としています。

placeholder image<写真:竹中工務店の皆さん>


Dave

それは素晴らしいですね。その歴史の広さ、社会とのつながりの深さについてもっと知りたいのですが、ご自身の役割について、またビルディング・インフォメーション・モデリングについて、そしてこれらすべての建物や構造物に関するデータから何が生まれるのかについて教えてください。

 

山崎氏

私は、"BIM (ビルディング・インフォメーション・モデリングの略)" の推進をリードしています。これまでも3Dモデルは使われてきましたが、これは情報をデジタル化する取り組みです。建物と3Dモデルを組み合わせ、建築業界の様々な業務に活用することで、業務全体の生産性を向上させるための最も基本的な技術です。私はこの新しい技術を建設現場に導入する責任者です。

 

Dave

それはとてつもない、大きな変化ですね。また、デジタル化によって多くのデータが収集されていると思いますが、どれも同じようには使われていないですよね。実際どのように活用しているのですか?他社とはどのように差別化していますか?

 

山崎氏

そうですね。私たちの強みは、設計や施工だけでなく、すべてのプロセスを提供できることです。それが私たちの強みだと思います。

 

Dave

それは、人材、サプライチェーン、リソース活用という点でも、非常に大きな意味を持ちますね。建築物をより良いものにするにはどうすればいいかという点でも、皆さんは多くのデータをお持ちではないでしょうか。

 

山崎氏

はい、建設業界は、労働力不足という非常に深刻な問題を抱えています。そのため、私たちはデータによる生産性向上に注力しています。私たちは多くの経験や知識を持っていますが、書類上にしか残っていないものが多く、一人ひとりが持つ固有の経験や知識の大半を可視化できていないのです。それゆえ、私たちはそれらを可視化し、データ化して、ワークスタイルを改善することが重要なんです。

 

Dave

おっしゃる通りですね。とはいえ、元々紙に書かれていたものからの移行はそう簡単ではないですよね。どのような課題や挑戦の変遷があるのか教えてください。

 

山崎氏

特に建設現場では、多くの紙を使っています。今はデータを使い始めています。我々はデータとデジタルトランスフォーメーションについてよく話しますが、私たちは文化を変えなければならないのです。つまり、カルチャートランスフォーメーションが必要なのです。

 

Dave

変化することは決して簡単なことではないですし、その上、「人」は決して簡単には変化してくれないと思います。そこで、Slalomとの出会いや、竹中工務店への支援についても教えてください。

 

山崎氏

Slalomと出会ったのは2年前、新しい技術の使い方を相談したのが始まりで、3つのプロダクト開発を支援してもらっています。彼らがどのようにアジャイルになっていくべきかを伝えてくれたことが、私たちの変革の始まりでした。

 

Dave

強力に変革を進められているんですね。先ほど話していたように、建物を建設する工程は、計画から施工、設計デザイン、現場の工事の仕方など、すべての工程や実際に起こる出来事を想像すると、決して小さな変化では済まないですよね。かなり驚くべき構造の変化です。

 

山崎氏

私たちが何かを建造することはサステナブルなものであるはずなのに、私たち自身の働き方やワークフロー、そしてデータは持続可能ではない。だから、それらをすべて変えなければならない。それはとても大変なことです。

 

Dave

実際の建物だけでなく、そのプロセスにおけるサステナビリティですか。気の遠くなるような話ですね。この点、里香さんにも話を聞いてみましょう。彼らの変革のエッセンスとは何なのですか?TAKENAKAとの仕事について教えてください。

 

知花

質問ありがとう。Slalomへの最初のオーダーは、「アジャイルが何であるかを1ヶ月で経験したい」というものでした。私とシニアアーキテクトは「どうしたら、アジャイルが楽しく、安全で、少しでも自信を持ってもらえるか?」を考えました。

私はアジャイルの本質はコミュニケーションとコラボレーションだと信じています。だから私たちは、「Fub-mindset(モノづくりの楽しさ)」と「Micro-behavior(小さな行動変容)」に焦点を当てることにしました。

それは、キレイなプロジェクト管理ではなく、雑多で、生き生きとした会話や協働を通じて、「動くソフトウェア」を「創る」経験をすることです。

これを行えるようになるためには、日々のちょっとした言動から意識を向けます。私たちは山崎さんをニックネーム「山ちゃん」で呼ぶようにしました。

最初は竹中の社員の方は皆ちょっと変な感じで見ていました。「山崎さんのことを、山ちゃんって呼ぶ人がいる。失礼なのでは?」と。でも、1人、2人と山ちゃんって呼ぶ社員が出てきたんですね。「え・・じゃあ、山ちゃんって呼んでいいですか?」と本人に直接聞き出す社員が出てきて。そうすると山ちゃんは「もちろんOKだよ!遠慮なく山ちゃんって呼んでね。」と。結果今、かなり多くの人が山崎さんのことを、山ちゃんと呼んでいます。

同じように。オンラインミーティングでカメラを回してみたり、みんなでお気に入りのアプリを共有し、ユーザー体験について深掘りしたり。そんなことをしながら社員みんなが本当に毎日繫り、だんだんと「動くソフトウェア」とは何かを、より身近な体験として、体で感じるようになっていくんです。

 

Dave

大それたことじゃないんですね。30日の中で、アジャイルな働き方を見せながら、それらを通じて仕事全体の文化や性格を変えていけばいいんですね。素晴らしいです。

では、彼ら仕事の変化について考えるとき、例えば、人々の実際の働き方で何が変わったのですか?

 

知花

ある日、プロダクトオーナーの一人が「最近自分の仕事人生の中で一番幸せだ」と私に言ってくれたんです。私の指摘は時にハードで、簡単なものではありませんし、学んでもらうこと、挑戦もたくさんありました。ただ彼らにとってはそれがとても充実したものだったのでしょう。私たちは人間中心のコンサルティングファームであり、私たちはチェンジ・エージェントを作りたいと思っているので、それを聞いてとても嬉しかったです。

 

Dave

すごくいい直接的なフィードバックですね。変革支援の方向性が実際に正しい方向に進んでいるということがわかりましたね。 実際の仕事の中では、何が変わってきているのでしょうか?

 

山崎氏

実際に多くの仕事の仕方が変わりましたよ。建設業界では、「マルチタスク」が典型的なんです。多くの仕事を任されるのが普通です。でも、里香さんやSlalomメンバーは「もっと一つの製品に集中するべきだ」と言いました。最初は「そんなこと無理だ、何言ってるんだ、そんなことしたくない」と伝えましたが、あなたはそれでも伝え続けていました。

 

知花

たくさん議論しましたよね。

 

山崎氏

最終的には、私は部下も含めてソフトウェア開発を行うメンバーの仕事の調整をすることにした。私たちのこれまでのやり方に、課題があり改善すべきことなんだと気づいたからです。

私の部下は仕事の仕方が変わり「今の時間が一番幸せです」と言ってくれています。これがかなり大きな変化です。

 

Dave

マルチタスクを廃止し、実際に人々の仕事に対する反応を向上させるなんて、それはすごいことですね。

改めて本当にありがとうございます。山崎さん。Slalomとのパートナーシップについてチャンスをいただき、ストーリーを伝えていただきありがとうございます。里香さんもありがとう。皆さんの実践されている仕事にとても感銘を受けました。Slalomらしさ、そしてあなたの個性を持って、より多くのお客様の成功を支援してください。

 

山崎氏

今日はお招きいただきありがとうございました。

 

知花

ありがとうございました、とてもワクワクしました!

スピーカー紹介

 

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株式会社竹中工務店
生産本部 生産BIM推進グループ グループ長
山崎 裕昭氏

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Slalom株式会社
アジャイルコーチ
知花 里香

 

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アジャイルの推進は一度限りのプロジェクトではなく、組織全体にわたる継続的な取り組みです。企業が長期的なアジリティを確立するためには、技術的な側面だけでなく、長年培った文化の変革も不可欠です。

「アジャイル」は開発分野から端を発している概念でありながら、変化に適応するために「コラボレーション」を促進し「ビジネス価値とソリューションの整合性を高める」概念です。私たちと共に、アジャイルの価値観や原理原則をどのように活用していくのか、改めて考えてみませんか。

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